心臓カテーテル検査

循環器内科

心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査とは

心臓病の診断には、胸部X線写真・心電図・超音波検査・核医学検査などさまざまな検査があります。しかし、これらの検査で不十分な点を補い、今後の治療方針を決定する際に極めて重要な情報を与えてくれるのが心臓カテーテル検査です。カテーテルとは、合成樹脂でできた細長く軟らかい医療用の管のことです。これを足の付け根や腕、手首の動静脈から体の中に入れ血管に沿って先端を心臓までもっていき、心臓の働きや病気の種類・重症度を詳しく調べます。例えば、心不全・心臓弁膜症・先天性心疾患などでは、心臓の圧や血液の流れ具合を調べたりします。また狭心症や心筋梗塞では、血管に狭い所やつまった所がないかなどを調べます。

心臓カテーテル検査には大きく分けて、右心カテーテル検査と左心カテーテル検査 があります。

右心カテーテル検査 静脈からカテーテルを挿入し、大静脈・右心房・右心室・肺動脈脈の圧測定や造影、また心拍出量や短絡量の測定をします。さらに心筋症のような心臓の筋肉細胞(心筋細胞)の病気の有無や程度を診断するために心臓内側の筋肉を摘んできて顕微鏡で調べる心筋生検が行われることもあります。
左心カテーテル検査 動脈からカテーテルを挿入し、大動脈・左心室などの圧測定や造影、また冠動脈の造影も行います。

具体的にどのようにして行うのか

これまで心臓カテーテル検査というと、足の付け根から管を入れて検査終了後も長時間の安静を強いられ、危険で大変な検査というイメージがありました。しかしそれはもう10数年前のことです。現在はカテーテルも非常に細くなり、足からではなく腕、特に手首からカテーテルを挿入することが多くなりました。従って安静時間は短くなり、危険性も大幅に減少しています。

  • まず局所麻酔を行います。そのうえで血管に針を刺して、そこからカテーテルを挿入し心臓まで進めて種々の検査を行います。
  • 検査中は仰向けになって検査台の上に寝ているだけです。局所麻酔時の痛み以外は、ほとんど痛みを感じることはありません。検査内容により若干の差はありますが通常は30分から1時間程度で終了します。終了後はカテーテルを抜去し、穿刺部位(針で刺してカテーテルを入れた所)を圧迫して血を止めて病棟へ戻ります。
  • 足の動脈からの検査の場合は約6時間仰向けの状態で安静を保ってもらい、圧迫を除去しても出血しなければ安静を解除します。手首の動脈からの検査の場合は約4時間の穿刺部位の圧迫のみで、仰向けの安静は必要ありません。検査直後から歩けるだけでなく、身の回りのことも両手を使ってできるというメリットがあります。
  • 検査を足から行うか手首から行うかは、その検査内容などにより主治医が決めます。

どのような疾患が対象となるのか

前述の心不全・弁膜症・先天性心疾患・心筋症や狭心症・心筋梗塞などの虚血性心 疾患が疑われる場合に心臓カテーテル検査の適応となります。なかでも最も頻度が高 いのは、虚血性心疾患が疑われる場合です。現時点では、この疾患は心臓カテーテル検査なしに正確な診断と適切な治療方針の選択ができません。

ここで狭心症に対して心臓カテーテル検査(冠動脈造影)を行った一例を示します。 狭心症とは、冠動脈の動脈硬化によって血管がつまってくる疾患です。血管のつまり によって極端に血液不足が続くと筋肉の壊死をきたします。検査のみならず治療も、カテーテルを介して狭窄部分の拡張・形成を行うことが可能です。

治療後、つまっていた血管部分に正常に血液が流れているのがよくわかります。

検査に伴う危険性は?

心臓カテーテル検査自体による死亡または重篤な合併症が発生する率は一般的には 0.1~0.2%以下とされています。カテーテルによって血管が傷付いてしまう等により発 症する重篤な合併症(心筋梗塞、脳卒中、コレステロール塞栓症なども含む)は器材・ 技術の進歩に伴い非常にまれなものとなっており、熟練したスタッフが行えばほとんど ありません。また検査時に造影剤を使用することが多いため、造影剤自体による副作 用の出現や腎臓の機能が低下している時には特別な配慮が必要となります。その他、 カテーテルが通過する血管がもともと閉塞していたり傷がついていたりする場合は検 査が不可能なことも稀にあります。

検査中および検査後は、心電図、血圧の監視等、万全を期しており速やかな対応がとれるようになっています。また、危険が予知された場合は検査を中止する場合もあります。

合併症に対しあまり神経質になりすぎて、必要な検査を受けずにいるということは得策ではなく、むしろ診断があいまいとなり危険であるということも理解していただきたいと思います。