虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

循環器内科

虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

心臓の働き

心臓は筋肉でできた袋状の臓器であり、その袋が一分間に60~100程度で膨らんだり縮んだりしています。また袋の中には四つの部屋がありそれぞれの部屋の出口には弁がついており、血液が一定方向に流れる仕組みとなっています。こうして心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしているのです。心臓が肺から血液の中に入った酸素や、消化管などから血液中に入った栄養分を全身に送り出すことにより、全身の臓器に酸素や栄養分が行き渡り、脳や肝臓、腎臓などの臓器が働ける環境を作り出しています。

虚血性心疾患とは

心臓がポンプとして動くためには自分自身も酸素や栄養分が必要です。心臓の周りには冠動脈と呼ばれる血管があり、自分自身が送り出した血液の一部がこの血管を流れて血液中の酸素や栄養分を用いて動いています。もし、心臓への血液の流れが悪くなった場合、心臓に十分な酸素や栄養分がいかなくなり、さまざまな症状や不都合が生じます。こうした心臓への血流の低下による疾患を虚血性心疾患といいます。虚血性心疾患には冠動脈の血流が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉に酸素や栄養分がいかなくなるために心臓の筋肉が死(壊死)んでしまう心筋梗塞と呼ばれる病態や、筋肉は壊死しないものの血流が不十分なために、胸の痛みや心臓の動きが低下する狭心症と呼ばれる病態があります。

心筋梗塞症

心筋梗塞は冠動脈の血流が極度に低下したために心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。心臓のポンプとしての機能が落ちてしまいさまざまな合併症を生じることも多く命にかかわる重大な疾患です。症状としては胸痛、冷汗、呼吸困難、吐気、嘔吐などがあります。 心臓の筋肉は血流が低下し約20分もすれば段々と壊死していきます。治療としてはできるだけ早期に詰った血管をみつけて、そこを広げて血液を再開することが必要です。12時間以上たってしまうとほぼつまった血管の範囲の心筋は壊死してしまうため、血管を広げる効果は少なくなってしまいます。また、血管を広げても壊死した筋肉の範囲は非常にもろくなっています。心臓に負荷がかかると袋の一部が破れたり(心臓破裂)、心臓にある弁機能が悪くなったりする合併症が発生しやすくなります。心筋梗塞直後はできるだけ安静にし、心臓に過度の負担をかけないようにしなければなりません。また、心臓のリズムか乱れる不整脈や心臓のポンプとしての機能が落ちてしまう心不全、また血流がまた不十分となり胸痛が出る狭心症などの合併症もあり、厳重な管理が必要となります。

狭心症

心臓の血管が動脈硬化や血栓などにより血管が細くなり、血流が悪くなると心臓の筋肉に十分な酸素や栄養分が来なくなります。特に運動時など心臓がより多くの仕事をしなければいけない状況になると、血流が不足し胸痛や左肩、顎、左腕などに痛みや圧迫感が生じやすくなります。こういった病態を狭心症といいます。心筋梗塞と違い完全に血流が途絶えているのでなく流れが悪くなっている状態なので、安静を保ったり、ニトログリセリンという冠動脈を広げる薬を使用すると症状が軽減します。痛みの持続時間は数分から精々15分程度で消失します。